COLUMN

古市憲寿の「チョコレートとジレンマ。」

#2 東京

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オリンピック、市場移転問題、小池劇場……。
この数年、「東京」という街が日本中を賑わせている。特に2020年に開催予定のオリンピックは巨大利権。どうにかしてオリンピックに関わりたいと奮闘する人々の人間模様は、それだけで映画が一本作れそうだ。

さて、読者の方は、この東京という街にどんな印象を持っているだろうか。
たとえば、2016年に大ヒットした映画『君の名は。』では、東京がとんでもない「大都会」として描かれていた。超高層ビルが建ち並ぶ新宿副都心、パンケーキが1600円もするオシャレなカフェなどが作中に登場する。
しかし東京が「大都会」というのは、ただのイメージに過ぎない。
最近『大田舎・東京』という、100路線以上の都バスに乗って、東京のことを考えるという本を出版した。手間がかかった割には地味な本なのだが、いくつもの発見があった。
一つは、東京の中で超高層ビルが建ち並び、オシャレな商業施設が立ち並ぶエリアなんて、本当に一部であるということ。江戸川区や練馬区にはまだ多くの畑が残されているし、戸建ての民家も多い。東京のほとんどは「田舎」なのだ。
世界の大都市と比べると東京の田舎っぷりは、より明らかになる。たとえば、東京の人は、以下のような理由を挙げて、「田舎」をバカにする。

「多様性を許容しない同質的な社会」「流行に乗っているつもりでついていけてない」「夜が早い」「動作が遅い」「男尊女卑がひどい」

だが、ニューヨークやロンドンなどと比べた時、その特徴は全て、悲しいくらい東京にも当てはまってしまうのだ。
たとえば、ニューヨークやロンドンで住民の3人に1人は外国出身。だが東京に住む外国人は約50万人で、人口の3.6%に過ぎない。同性婚もNGで「多様性がない」。
また、サービスにも遅れを取っている。中国の都市では電子マネーが普及し、お店での決済はもちろん、友人との割り勘にも現金はあまり使わない。しかし東京は未だに現金社会。UBERも全面解禁されていなかったり、世界で常識のサービスが使えない。「流行についていない」のだ。
そして「夜が早い」。24時間交通もなく、深夜営業のお店も少ない。さらに「動作が遅い」。東京人は、世界の大都市の人々と比べて歩くのが遅いというデータがある。信号の変わる間隔も、エスカレーターの速度も、もしかしたら世界一遅いのではないか。
日本中そうだが「男尊女卑がひどい」。女性役員の数も、女性議員の数も、世界的に見て、とんでもなく少ない。待機児童問題もここまで放置されてきた。

そんなわけで、東京は人口が多いだけの、「大都会」ならぬ「大田舎」だというのが僕の見立てだ。オリンピックに浮かれる前に、東京にはすべきことがたくさんあるんじゃないかな……。

PROFILE

古市憲寿

1985年生まれ、東京都出身。東京大学大学院博士後期課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所訪問研究員(上席)。株式会社ぽちえ代表取締役。専攻は社会学。 大学院で若年起業家について研究を進めるかたわら、マーケティングやIT戦略立案、執筆活動、メディア出演など、多方面に活動中。著書に『希望難民ご一行様』(光文社新書)、『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)、『僕たちの前途』(講談社)、『だから日本はズレている』(新潮新書)、『古市くん、社会学を学び直しなさい!』(光文社新書)など。 好きな食べ物はチョコレート。

    WRITER

    baus / BAUS編集部

    クリエイティブと社会の関係性において、 関わる全ての人々にとっての 「次」と「続き」を作る、そんなプラットフォームを BAUSは目指しています。

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