EVENT

QREATOR SCHOOL「クリエイターの勝算 vol.1」潜入レポート!

クリエイティブを牽引する2人が語る、デザイン×マーケティングの未来とは?

記事メイン画像

エンターテインメントの力を使ってクライアントの課題を解決することをめざす会社FIREBUGが新たに開講した「QREATOR SCHOOL」をご存じでしょうか? 毎回さまざまなゲストを迎え、クリエイティブの力、エンターテインメントの力を学ぶことができる学校です。2018年3月8日からは、SHOWROOM代表取締役の前田裕二さんをモデレーターに迎え、「クリエイターの勝算」シリーズがスタートしました。第1回のゲストはれもんらいふ代表の千原徹也さん。まったく新しいライブ配信サービス「SHOWROOM」を立ち上げたことで知られている前田さんと、ファッションからCDジャケット、CMまで幅広い作品を生み出す「れもんらいふ」代表の千原さん。トップクリエイターである2人のトークを、ほんの少しだけご紹介します。


いま話題の2人が斬る、近ごろのクリエイター事情。

まずは、前田さんが手がけるSHOWROOMの仕組みについて、ご本人から説明が。

前田さん: SHOWROOMの特徴は主に3つあります。ひとつめは、ライブ配信に特化していること。アーカイブ機能がなく、コンテンツが全て“生”であるため、見ている人と演者が必ず同じ時間を共有し合うという特徴があります。なぜあえてこうした制約をかけるかというと、ユーザーの求めていることが必ずしも常にユーザーの求めているものではないと考えるからです。例えば、「アーカイブを見せてほしい」という要求に応えていつでも見れるようにしてしまうと、他のライフイベント(例えば飲み会)に対して、どうしても劣後してしまう。「リアルタイム」に特化すると、ユーザーにとってのコンテンツの優先度も、また、その見方も変わってきます。最近僕は特に、コンテンツの完成度を高めるより、デザインの余白や変化の可能性を感じるような「揺らぎの設計」をコンテンツに入れ込むことを重視しているのですが、「生配信」はまさにその揺らぎを感じられることが面白さの一つです。一寸先に何が起こるかわからない、という感覚が、ワクワク、ドキドキをもたらします。

ふたつめは、視聴者の可視化です。SHOWROOMのアプリを開いてみると、みんなが本来見たいであろう演者が映っているメイン動画部分は相対的に小さく、むしろ逆に、視聴者側のアバターが画面の大部分を占めています。これは、ユーザーの皆さんに、ひとりの人格、キャラクター、当事者として、確かにサービスの中に存在して欲しかったから。実際にユーザーの皆さんを見ていると、「見る」から「いる」・「いく」へと、使う「動詞」(視聴・参加態度)が変わってきています。このようにして、コンテンツに対してあくまで能動的にオーディエンスが関与したくなるサービス設計を心がけています。

 

ここで、前田さんが自らSHOWROOMに参加。AKB48チーム8の後藤萌咲さんの生配信に登場すると、ほかの視聴者から「前田社長が登場した!」とコメントが殺到しました。視聴者が生配信を構成するキャラクターになった瞬間を目撃し、会場は一気に引き込まれます。

前田さん:みっつめは、ドラマが生まれること。実は、SHOWROOMは今や、国内でも最大級のオーディションのプラットフォームになりつつあります。このオーディションのプロセスにおいて、ドラマがたくさん生まれます。SHOWROOMを通じて、ファンと演者が同じ目的を共有して、そこでドラマが、絆が生まれていく。その絆が着実に積み重なって、コミュニティとなっていくのです。自分自身、あるいは、自分が作った作品や商品に対してファンをつけていくことは、“クリエイターの勝算”において、最も重要な部分かもしれません。同じベクトルに向かい、目標を共有してファンと二人三脚で進む。いくら卓越したクリエイティビティを持っていても、こうした自己発信が苦手なクリエイターにとっては、少し生きにくい世の中になってきてるなと感じます。

前田さん:続いて、ファンを増やすために大切な4象限についてご説明します。横軸はファンの数、縦軸はファンとのインタラクションの密度。インターネット上でファンと交流する密度が濃い人は身近な存在、まったく交流しない人は偶像的な存在として認識されます。身近な存在としてはまさにSHOWROOMで配信をしているアイドルの子たち、偶像としては矢沢永吉さんや松田聖子さんをイメージしてもらえるとわかり易いです。インターネット文脈で重要なこととしては、この縦軸(ファンとの距離感)と横軸(ファンの数)には明確に相関関係があるということ。分析の結果、縦の努力軸をどれだけやり切るかによって、横軸のファン数が伸びていく。これからは、インタラクションの努力をしないタレントには、なかなかファンがつきにくい時代になっていくかもしれません。
当然、トップオブトップの偶像になれるなら一番良い。でも、星の数ほどいる芸能人の中で、本当の意味で偶像的スターになれるのはほんの一握りです。そこを目指すのにはリスクが大きすぎる。そんな中で重要なのは、自分が4象限のどこに位置するのかを冷静かつ客観的に分析すること。必ずしも左上→右上の行くルートだけではなく、右下を経由して右上の行くルートもどんどん広がるはず。その意味では、一見すると今は単に身近に思える存在が、その人気をテコにして、もっと大きな夢を右上の世界でどんどん叶えていく世界がくるかもしれない。身近による偶像への逆襲、とでも言いましょうか。

千原さん:僕の仕事は、意外と偶像的な人を手伝うことが多いので、なかなか身近な存在の人と関わることがないのかもしれません。グラフィックデザインという仕事自体、どれくらい身近な人と関わっていけるのか? これは大きな課題です。芸能ではなくデザインに置き換えたとき、身近な存在というのは「デザインを洗練させない」ということにつながります。ただ、われわれデザイナーは「デザインを洗練させる」ことを仕事にしているので、そこの接点を考えていかなければいけませんね。

前田さん:確かに、洗練されたデザインを前提にした偶像は必ずいつの時代も一定必要とされ、存在し続けると思います。ただ、広義でデザインをとらえると、余白や隙があり、見ている人がその余白をつい埋めたくなってしまうという設計も、ひとつのデザインのあり方なのかな、と。

モノづくりの新しいスタイルを真剣討論。

では、SHOWROOMに見られるような新たな自己表現の場は、クリエイティブに対してどのように機能するのでしょうか。話題は、クリエイターから世間に対するアプローチの方法について。2人の話は次第にヒートアップしていきます。

 

千原さん:デザインって、作る人と作らない人との差が大きいんです。以前オリンピックのエンブレムが問題になりましたよね。グラフィックデザインの人は、今でもずっとあの話をしています。だけど、世の中の人にとってはどうでもいい話で、もう忘れられていますよね。

前田さん:確かに、もう忘れてました(笑)

千原さん:エンブレム問題の例でもわかるのですが、グラフィックデザインの業界って、世の中の一般と遠いところにあるんです。そういった意味で、デザイナーも世間にファンを増やす努力をしたほうがいいかもしれないですね。
「揺らぎの設計」という言葉が出ましたが、実はれもんらいふのデザインは隙のあるデザイン、洗練されていないことを意識しているんです。細かくこだわって仕事をしすぎると、デザインをやっていない人との距離感が遠くなっていく。自分の技術的にも洗練されたデザインは難しいし、そこに重きを置いてやっていくのがデザイナーとして重要なのかを考えたとき、僕はみんながおもしろいと思えるデザインを追求していきたいと思った。それがれもんらいふの特徴にもなっています。

前田さん:たとえば、デザインを作っている過程で、それを第三者に相談することについては、どうでしょう。アートを前提にすると、過程の共有は価値毀損をもたらす可能性があるとも思います。よって、「アート性」と「余白のあるデザインでファンを増やす」ことはトレードオフになる可能性があると思います。難しいですが、それらのバランスをとる、すなわち、アートがもつ偶像性を損なわないまま、ファンを増やすやり方が見つけられたらいいですよね。

千原さん:それは、これからのグラフィックデザインの課題だと思います。大阪で個展をやったとき、ただ見せるのではなく、その作品を一緒に作った人を招いたトークイベントをして、作品ができるまでの過程を見せる試みをしました。作品を見せたいのではなく、アートやデザインも、作る過程を知ってもらうことで、身近に感じてもらいたいんです。

前田さん:それ、面白いチャレンジですね。SHOWROOMは完全に「過程を知ってもらう」場所として機能します。

千原さん:デザインがそういう作り方にチャレンジしたら面白いでしょうね。

 

デザイン×マーケティング、「自分の物語」型のクリエイティブとは?

ここで、話題は千原さんの専門分野であるデザインと、前田さんの専門分野であるマーケティングの融合へ。それぞれの分野でトップを走る2人だからこそ、発想はさらに飛躍していきます。

千原さん:以前桑田佳祐さんのCDジャケットを担当したとき、急遽ジャケットの新案を見たいと言う要望があり、たった1日で作らなければいけないというピンチがありました。僕は、ロンドンの空港でお土産に買ったアヒルをただ並べただけのジャケットを提案したんです。そしたら、その案が「これが1番意味がない」という理由で桑田さんに選ばれました。ネット上ではさまざまな深読み、憶測が飛び交いましたが、実は全く意味のない作品なんです(笑)

前田さん:なるほど。確かに、いわゆる「アート性」がファンの消費行動に及ぼす影響度って、そこまで高くない。当然ジャケ買いという概念はあるものの、ファンの消費行動はそういうことでもない。つまり、ジャケットがアヒルでも、ヒヨコでも、野鳥でも、空想上の伝説の鳥でも、それがなんだとしても関係がなくて、ファンであるがゆえに、結局好きだからどんなジャケットでも買ってしまうんだと思います。ただ、マーケティング的に考えると、新規顧客の開拓には繋がると思う。アートは、もともとそのコンテンツをそこまで深く知らない人にどれくらいリーチできるか。クリエイティブ自体の芸術性というよりむしろ、新規ユーザーへのマーケティング観点で、アートの意味を見出すことができるのかな、と感じています。珍しくて、センスのあるアートをみたら、「おっ!」と思って、知らないアーティストの作品だとしても、つい手にとってしまうので。ただし、僕がクリエイターやデザイナーだったら、神聖なアートやデザインにこうしてマーケティングの発想を入れ込む事自体、ちょっと違和感や忌避感を覚えるかもしれません。そういう意味で、芸術性とマーケティングの葛藤ってあるんですか?

千原さん:芸術とマーケティングの狭間、「売らなきゃいけない」という自負は確かにあるかもしれません。デザインを手がける人の多くは芸術思考が強く、インターネットの商材や世の中に出ていくものは、芸術作品としてどうかという目線で見たときに嫌われることもあるでしょう。

前田さん:なるほど。「売らなきゃいけない」というマーケティング観点のみに立脚したデザインが増えると、モノづくりの場からどんどん芸術性が奪われてしまいそうですね。それはそれでちょっと、怖いことだとも感じます。

千原さん:ただ、歴史に残っている広告は、やはりマーケティング思考を備えています。よく例に出てくるのが、宮沢りえさんのサンタフェの広告。芸術としてもマーケティングの面でもバズった、歴史的な作品です。モデルの立ち方や文字の入り方など、いろいろな考えに基づいて作られていて、それが世の中と一致したという意味でいい広告ですね。

 

白熱のトークも終盤に差しかかり、ここで司会から「クリエイターはこれからどういうことを目指していくべきだと思いますか?」という質問が。

千原さん:昔、グラフィックデザインは、世の中に出るまで世の中との接点がありませんでした。だからみんな修行して、コピーを何回も直して、10年やってやっと世の中に出るものを作れるようになった。しかし、今は勝手にモノを作ってネットで発信することができるし、コピーライトされていない言葉がバズったりする時代です。クリエイターと世の中の接点が、より必要になってくると思いますね。

前田さん:最近、「他人の物語」か「自分の物語」かという話をよくします。時代によって求められているものが変わっていくのは当たり前。かつては、世の中と関係なく、自分が良いと思ったモノを作る風潮がありました。自分の世界観を一方通行的にオーディエンスに消費してもらうのが、「他人の物語」型のものづくりです。それに対して、「自分の物語」型のクリエイティブでは、作品に共感し、消費者が作品を「自分の物語」として体験することができます。例えば、SHOWROOMにおいては、視聴者はアバターとして生配信に参加し、演者と同じ空間に「存在する」感覚を得ます。これはまさに、「自分の物語」型の体験です。昨年ヒットした『君の名は。』も、一見「他人の物語」に見えつつも、実は「自分の物語」型だと思います。物語は無色透明なキャラクターである主人公の独白で始まり、それらギミックによって、鑑賞者は気づけば自分を登場人物に置き換えて、物語に共鳴、擬似介在していく。そして、コンテンツへのエンゲージメントが深まっていく。幅よりも「深度」が重要とみんな気づき始めている今の時代において、このようにして、いかに観客に「自分の物語」を感じさせるかが重要だと思っています。
よって、質問に対する僕の答えは明確です。これからは、「自分の物語」をうまく設計できるクリエイターこそが勝つと思います。

トークの途中、「この話題、本当に面白くて話が尽きない!」(前田)と本音が飛び出すほど大盛り上がりだった「クリエイターの勝算 vol.1」。トークのあとは会場からの質問におふたりが答える時間もありました。質問者の名前を必ず復唱しながら、それぞれの疑問に向き合っていた前田さんの姿が印象的でした。

自己表現の方法が多様化する昨今。クリエイターもまた、世間へのアプローチの仕方を考え直すべき転換点に立っているのかもしれません。多彩なパースペクティブを携えつつも、鑑賞者が共感できる「自分の物語」を生み出していけるクリエイターが、これからの時代の旗手となっていくでしょう。

 

QREATOR SCHOOL「クリエイターの勝算」シリーズは、隔月で全5回の開催を予定しています。また、同イベントの模様は、FIREBUGが提供する30秒動画サービス「30」でも配信予定です。トップクリエイターたちの本音を覗いてみたい方は、ぜひチェックしてみてください。

PROFILE

前田裕二

1987年東京都生まれ。2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、UBS証券株式会社に入社。2011年、UBS Securities LLCに移りニューヨーク勤務を経た後、2013年に株式会社ディー・エヌ・エー入社。"夢を叶える"ライブ配 信プラットフォーム「SHOWROOM(ショールーム)」を立ち上げる。2015年に当該事業をスピンオフ、SHOWROOM 株式会社を設立。ソニー・ミュージックエンタテインメントからの出資を受け、合弁会社化。現在は、SHOWROOM株 式会社・代表取締役社長として、SHOWROOM事業を率いる。2017年6月には初の著書「人生の勝算」を出版、 Amazonベストセラー1位を獲得。


    PROFILE

    千原徹也

    1975年京都府生まれ。デザインオフィス「株式会社れもんらいふ」代表。広告、ファッションブランディング、CDジャ ケット、装丁、雑誌エディトリアル、WEB、映像など、デザインするジャンルは様々。近作では、Zoffの広告、装苑の 表紙、NHKガッテン!ロゴ、adidas Orignalsの店舗ブランディングなどが知られている。 さらには、サインペンを使用してキャンバスに描くアーティストとしての活動、ラジオパーソナリティ、京都「れもん らいふデザイン塾」「れもんらいふしょっぷ」「れもんらいふフェス」の開催などグラフィックの世界だけでなく活動の幅を広げている。


      写真・渡辺秀和 文・齋木優城 編集・上野なつみ

      関連記事

      関連記事