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“肩書”から“アイデンティティ”へ。AI時代を生き抜く、「個」の力に注目したコミュニケーション術

BAUS主催ワークショップ「AI時代のクリエイティブ組織を強くするBAUS式ブートキャンプ・プログラム」レポート

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BAUSとコードアワードがコラボしたワークショップ「AI時代のクリエイティブ組織を強くするBAUS式ブートキャンプ・プログラム」が、「CODE Digital Creative Academy Vol.5」として東銀座のD2Cホールにて開催されました。今回のイベントでファシリテーターを務めたのは、TOKYO WORK DESIGN WEEK主宰でBAUS MAGAZINE編集長の横石崇。クリエイティブ プラットフォームBAUSのオープンから1年、クリエイティブのチームづくりをサポートしてきたBAUSによるイベントの様子をたっぷりお届けします。


AI時代」のビジネスの鍵となるのは、「コミュニケーション」

ーーこのイベントに参加したきっかけは?

「チーム内のコミュニケーションを円滑化、効率化することに関心があって来ました」(映像クリエイター)
「自社が運営しているメディアを大きくしたい。色々な人をメディアに巻き込む方法が知りたいです」(Webメディア運営)
「チーム内で出るさまざまな考えをうまくマネジメントし、業務に生かす方法を探しに来ました」(Webディレクター)
「フリーランスのクリエイターを集めて、新しいチームを作ろうと計画中です。そのヒントがあればいいな、と思っています」(学生兼フロントエンドエンジニア)

会場に集まったのは、年齢も性別も業種も、すべてが異なるの参加者たち。テーブルごとに4つのグループに分かれ、ワークショップに臨みます。ほとんどの人が初対面同士という緊張感のなか、今日のワークショップについて横石からは、「今日は、皆さんが相手に話す場を作ります」との説明が。今回のブートキャンプ・プログラムでは、複数のワークを通じて、多種多様なメンバーとコミュニケーションをとっていきます。

この「コミュニケーション」こそ、じつは今回の重要なテーマ。イベントタイトルにもある「AI時代」のビジネスの鍵となるのは、人の心と向き合いながら、既存のバイアスを克服していく発想なのだといいます。

AIが絵を描いたり、音楽を作ったりすることが当たり前の時代になってきました。しかし、そんな時代の中でも、ホスピタリティ・クリエイティビティ・マネジメントは、AIでは代替されにくい仕事だといわれています。相手の心と向き合うことや、発想の飛躍が必要であることが理由に挙げられるでしょう。また、これからの時代に重要視されるのが自分のコンセプト。その仕事を行なううえでの自分の特徴を創造できる人が、ますます必要とされることが予想されます」

こういった前提のもと、横石はいくつかのワークを提示しました。今回はそのなかからふたつ、ワークの内容をみていきましょう。

アイデンティティタグ

続いて行なったのが、自分に3つの「ハッシュタグ」をつけよう、というワークです。自分の仕事観や組織での役割、性格などを短いフレーズで表現していきます。
こちらのワークもなかなか難題。皆さん、頭を悩ませていました。筆者も、自分のハッシュタグを考えてみました。東京藝術大学でフェミニズム・アートを研究する傍ら、ライターとして活動している私なら‥‥、「#アート #執筆 #ダイバーシティ」と、こんな感じでしょうか。

参加者の皆さんのハッシュタグを覗いてみると、個性豊かなキーワードがずらり。「#スタートアップ大好き!」「#パラレルワーク」「#仕事の効率化」「#ダンス」「#コミュニケーション」などなど、仕事に対する姿勢から私生活での趣味まで、その多様性に驚かされます。

「これからの時代は個人の役割、その人にしかできない役割は何か、ということが重要になってきます」と、横石。「希少性を問われる時代のなかで、あなたにしかない特徴、あなただけのアイデンティティが何かを考え、顕在化していくことが必要です」

アイデンティティタグに象徴されるような「個の希少性」を明らかにすることで、個人と仕事のマッチングを考えることが可能になるといいます。これまでは、クリエイターが企業の規範に合わせてモノを作り、それを流通させるという枠組みが一般的でした。しかし今後は、個人の能力やアイデアと、それに合致するプロジェクトがマッチングし、そこにビジネスが生まれるというモデルが確立されていくかもしれません。

プロジェクトメイキング

ひとりひとりにアイデンティティタグが付き、それぞれのキャラクターが分かってきました。ここで参加者は、自分と異なるグループに属する人のハッシュタグを見て、興味がある人34人を選択し、再度グループを組みなおします。新しいグループになって行なわれたラストのワークは、「3人でできるユニークなプロジェクトを考えよう」というもの。各グループのメンバーで実現できそうなおもしろいプロジェクトを考え、発表するワークです。

このワーク最大のポイントは、議論のプロセス。プロジェクトの内容を考えるときも、そのプロジェクトに具体的なキャッチコピーをつけるときも、まずは「ひとりでのアイデア出し」からスタートします。個人でアイデアを考えたあと、その内容を全体でシェア。お互いにコメントを交換し合ったのち、再び個人でアイデアをブラッシュアップさせたうえで、最終的な話し合いをチーム単位で行ない、結論を導くというフローを辿ります。

このプロセスに則った議論の結果、各チームからはバラエティに富んだプロジェクトアイデアが誕生しました。

4つの新プロジェクトを、かんたんに紹介すると‥‥

グループA「声ダンスThe movie
プロジェクションマッピングを取り入れた、かっこいい映画を作ります!

グループB「ダダ漏れ系エンターテインメントクリエイター」
みんなが気になるモノづくりの過程、Youtubeで公開しちゃいます。

グループC「アイデンティティリサーチ」
DNAを利用して、あなたのルーツ、アイデンティティを調べつくします。

グループD「沖縄ワッショイ!」
2045年、沖縄を平均年収1位の金持ちアイランドに!沖縄の資源を活用しつつ、地方と東京を行き来するビジネスモデルを生み出します!

肩書ではなく、役割ベースで「話そう」。個の力に注目したコミュニケーション術。

個性豊かなアイデアの数々に、会場は拍手に包まれました。
それぞれのプレゼンテーションを聞いたあと、横石からこんなコメントが。

「今日取り組んだようなコミュニケーション、普段のビジネスシーンでどれくらい実践していますか? 従来のやり方では、仕事におけるコミュニケーションは肩書に基づいたものになりがちです。肩書をベースにしたコミュニケーションと、個人の役割、つまりアイデンティティに基づいたコミュニケーションは違いますよね。これからの組織は、個のアイデンティティを積み上げた結果として作られるもの。ひとりひとりのアイデンティティや世界観に焦点をあてることで、よりよいチームが作られるのではないでしょうか」

終了後の懇親会では、参加者からこんな声が。

「仕事中には得ることのできない考え方を見つけた気がします」
「他業種の人も多かったけれど、ワーク中は業界のちがいが気になりませんでした」
「話しているうちに、それぞれのキャラクターが把握できる。アイデンティティを見抜いて話すことで、新たなマッチングが生まれることを実感しました」

今回のワークショップを通じて、これからの時代にマッチしたコミュニケーションを発見した参加者たち。それぞれの目標や今後の課題を語り合いながら、今回のBAUSイベントは幕を下ろしました。
私たちが直面する「AI時代」においては、さまざまな変化が目まぐるしく起こり続けています。だからこそ、お互いのアイデンティを確認しあうことによって、チームとしてのつながりが強まるのです。新しい時代の組織づくりについて、個の視点から問い直すことのできた、充実の一夜となりました。

写真・石亀広大 文・齋木優城 編集・上野なつみ

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