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今は、大きなものに立ち向かった方が得する時代!?世間をザワつかせるふたりの“仕掛けのイズム”

三浦崇宏(PR/Creative Director)×青木真也(総合格闘家)

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これはクリエイターと格闘家の異種格闘技戦である。博報堂を退職し、今年の1月にThe Breakthrough Company GOを設立した三浦崇宏さん(写真・左)と、総合格闘家として世界チャンピオンにも輝いた実績を持つ青木真也さん(同・右)。一見すると何のつながりもなさそうなふたりだが、実は多くの共通点を持つ。1983年生まれ、早稲田大学出身、柔道経験者。そして、とにかく“仕掛ける”ことに卓越している。片や広告・PRのビジネスで、片や総合格闘技のリングで世の中をザワつかせているわけだが、ふたりには一体どのような“仕掛けのイズム”が息づいているのだろうか。それを知るべく、青木さんが主催する柔術のレッスンに三浦さんが参加する形で対談を実施した。高校時代に選手として着ていた柔道着を身にまとった三浦さんの勇姿とともにお届けしたい。


憧れのヒーロー・青木真也を前にして、三浦さんが想うこと

ーーふたりの出会いはいつだったんですか?

三浦:これは公には言ってないんですけれど、僕、一瞬だけ早稲田大学の柔道部に入りかけたことがあって。そのときにひとつ上の学年で、狂犬のようなスタイルで周囲をビビらせていたのが、後の青木選手だったんです。

青木:僕はそのときに三浦さんがいたことは全然知らなかったんですけれど。

三浦:遠巻きに見て「危ない、ここは!」って悟りましたから(笑)。

青木:きちんと挨拶したのは今年の2月に編集者・ライターの中川淳一郎さんが主催したイベントに遊びに行ったときですね。そのときに三浦さんが出演していて。

三浦:あのときはものすごく嬉しかったです。“青木真也”といえば、僕の中でずっと憧れの存在でしたから。同年代で、大学も同じ。そんな人間が大学在学中から日本の格闘技界を背負って国内外で活躍しているというのがものすごくカッコよくて。いつかこんな人と肩を並べられる存在になりたいと思っていたんです。

ーー青木さんはヒーローだったんですね。

三浦:そうですね。青木さんが警察官をやめて格闘家の道を歩み出したように、今年、僕も大手の広告代理店をやめて自分の会社を立ち上げたわけですが、そのタイミングでお会いすることができてとても光栄でした。かつて青木さんが立ったスタートラインにようやく立てた気がしています。

青木:そうやって言ってくれる人がいることがありがたいです。でも、自分の中ではそんなにすごいことをしている自覚はないから、ちょっとした違和感はあります。

三浦:でも、それこそがあるべき姿だと思うんです。クリエイターでも名前が売れているだけで、業界内では何を作っているのかわからない人ってたくさんいますから。世間を味方につけることを考えないで、ただ目の前にある試合にひとつひとつ真剣に向き合ってきた。その結果として、たくさんの人がついてきているのは素晴らしいことだと思います。

 

相手からも観客からも逃げない、格闘家とクリエイターの理想。

——三浦さんと青木さん、ふたりは仕事も立場もまったく異なりますが、“仕掛ける”という点で非常に長けていると感じます。

三浦:青木さんってめちゃくちゃ仕掛けてますよね。格闘家なのにビジネスとITとクリエイティブに詳しいですし。今日も道場の雰囲気が和気あいあいとしていて素晴らしいって話をしたら、「コンセプトはスナックですから」って。それってSHOWROOMの前田裕二さんやキングコングの西野亮廣さんが言ってることと同じですからね。ITビジネスの流れを常にチェックして、格闘技界に持ち込もうとしているっていう。

青木:そういうのが好きなんでしょうね。もともとオタク気質だし、Webとか好きだし。

三浦:僕は、格闘家とクリエイターは近い部分があると思っています。格闘家って目の前にいる相手に勝たないといけないんですけど、それと同時に試合を観に来たファンも熱狂させないといけない。クリエイターも同じで、目の前のクライアントが喜ぶ作品をつくりつつ、多くの生活者が楽しんだり感動するところまで設計しないといけない。その両方ができる人ってなかなかいないんですよ。その点、青木さんは勝負にこだわり、観客を熱狂させる、そのどちらも高いレベルでやっているのがすごい。僕もそうありたいと思っています。

青木:僕は負け太りしたいんです。負けて太れる人こそ本当に強い。その最たる例が高田延彦で、逆にできなかったのが前田日明かなと。

三浦:高田さんはもう負け太りの王ですよね。(アントニオ)猪木さんもそうですし。それで言うと、すごく失礼ながら青木さんの試合でみんなの記憶に残っているのって負けたものが多いんじゃないですか?

青木:長島(☆自演乙☆雄一郎)でしょ? あれはいいよね(笑)。僕のベストバウトです。

三浦:負けた試合のことを笑顔で「あれ、いいよね」って言える器の大きさというか、人間の太さが半端ない! 僕、痺れすぎてもうおしっこ漏れそうですよ。

青木:なんで? 最高のコンテンツじゃん。もうあの当時の自分のことを抱きしめたいもん。自分で言うのもカッコ悪いですけれど、あれ以降いろんな人がMIXルールで戦ってるけど、あの試合を超えられたものってないと思うんです。だって、数年経った今でも話題に上がるし、あの魔裟斗が僕の負けた瞬間に本気で熱くなってたんですから。

三浦:そうやって自分の人生を俯瞰して物語化して楽しんでいるのが、青木さんのすごいところです。

——では、仕掛ける際のコンテクスト(文脈)についてはどのように考えていますか?

青木:それは本当に難しいんですよ。僕は「青木、次はこう行くよね」って思われたら負けだと思っていて、その斜め上を飛び越えることがしたい。それを常に考えています。

三浦:青木さんはそういうところありますよね。予想は裏切るけど、期待には応えるっていう。

青木:自分がやってることを全面的に応援されるのは嫌なんです。たとえば、僕が格闘技だけでなくプロレスの試合に出ることを応援する人もいれば、批判する人もいる。そうやってバランスを取りたいんですよね。

三浦:僕が考えていることはすごくシンプルで、普通の広告クリエイターだったら絶対にやらないような仕事にあえて飛びつくようにしています。というのも、僕は少し前まで博報堂という大きな広告会社に所属していたんですけれど、すごく葛藤していました。広告クリエイターってどんなにクライアントのことを考えてマーケティングの戦略を提案したとしても、あくまで宣伝部の対応で、経営者と仕事することはほとんどない。企業全体の予算でいうと約2割の広告宣伝費にしか関与できないんですよね。でも、商社とか銀行の担当者ってクライアントの社長と直にやりとりすることなんてざらで、しかも年間の予算運用を提案したりする。それがすごく悔しくて。だから、自分の会社を立ち上げて広告やPRの可能性を拡張して、クライアントのビジネス全体に貢献する仕事をしようと思ったわけです。

——なるほど。ちなみに青木さんは格闘技業界のことを考えて何か仕掛けることはないんですか?

青木:僕は業界を大きくしようとか、今よりよくしようっていう大義がないんですよ。それよりも自分が元気でいたいし、自分の欲望に忠実でいたい。

三浦:それは存在の大きさだと思います。だって、青木さんが人と違う方向に走れば自然とみんなが見てくれますから。だから、わざわざ業界のことを考えなくてもいいんですよ。ただ、青木さんは自分の行動によって何が起きるかをすごく計算してやってる気がします。

青木:そうですね。

三浦:それって寝技に近いなと。自分がこういうふうに動いたら相手がこう動く。じゃあ最終的にこうやって追い詰めてフィニッシュしようって考えていると思うんです。そういう意味で捉えると、青木さんは世間とも寝技をしているのかなって。

青木:そう感じるとしたら、それは僕が変質者だからだと思います。人に認められたいという気持ちがある反面、どこかで人のことをイラつかせたいという気持ちがあるから。

三浦:それは対戦相手だけに限らず世間ともですか?

青木:SNSとかでも。敵をつくることで、自分にストレスをかけてるんです。それで試合をして勝つじゃないですか。そうすると溜まっていたフラストレーションから解放されて、一気に快楽を得られるから。だから、常にどこかに敵がいないとダメなんです。

三浦:それって多分、自分のことを物語化しやすいからなんですよね。敵がいることで“青木真也”という存在の立ち位置が明確になって、大きな波紋を起こしやすくなる。だから業界のことを考えていないっていうのは、半分は本当で、半分は嘘なんじゃないかと僕は思います。青木さんは業界と向き合ってるんじゃなくて、世の中と向き合ってるんですよ。“青木真也”というコンテンツを駆使して。

何にケンカを売ったらいちばん目立つのか。

——仕事をしていると自分の手には負えないと思うようなこともあると思うのですが、怖いものはないですか? 

三浦:それで言うと、さっきの負け太りの話に近いですけれど、今って大きい波に立ち向かった方が得する時代だと思うんです。僕の大学時代の友人に都議会議員の音喜多駿がいるんですけれど、彼なんかはまさにそう。都知事だった時の舛添要一にケンカを売って、その後に小池百合子にも反旗を翻していますから。今はSNSを通じて自分の言葉を社会に伝えやすくなってますし、生活者がどんどん賢くなってる。自分の信念を持って立ち向かっていれば、大義をわかってくれる人が出てくる時代。逆に媚びたり逃げたりしたら絶対にその姿勢はバレてしまうし、その瞬間に人は冷めてしまう。

青木:それは本当にそうだと思います。大きなものに立ち向かうことで、一気に引っ張られて自分も上のステージに昇ることができますし。

三浦:だから、最近は仕事でPR戦略を考えるときも、そのブランドや商品が何にケンカを売ったらいちばん目立つのかっていうコンテクストをすごい考えますね。ただ、そのためには大きな波に立ち向かっていくだけの強度が、コンテンツに必要です。その強さがないのであれば、波に逆らわずに乗った方がいい。だから、商品の魅力や、キャッチコピーであれ、映像であれ、ひとつでもいいから強さのあるものがPRの文脈をつくっていくうえではすごく重要になると思っています。

——ありがとうございます。とても興味深い話ばかりなのですが、時間がきてしまったので今回の対談を締めようと思います。青木さんは11月24日に試合があります。一階級上の対戦相手になりますが、すでにどう戦っていくというプランはあるんですか?

青木:特にないですね。僕にしかできない仕事だからやるだけです。もちろん戦略は立てますが、格闘技って相手の力量が数値化できないので組んでみないとわからないんですよ。それに僕が戦って魅せることが、自ずと結果に繋がると思うので。

三浦:強さを数値化できるのはドラゴンボールの世界くらいですよね。

 

ーー(笑)。では、三浦さんの今後の展望は?

三浦:僕はこれからも広告・PRのビジネスにおける可能性を広げていきたいなと考えています。これからGOにジョインする予定のメンバーもそれぞれがプレイヤーとして突破力のある人たちなので、より強い会社になっていくはず。あと、来年から現代アートの事業もはじめようと思っています。広告・PRから始まったGOですけど、どんどんわけわかんない会社になっていくんじゃないですかね(笑)。

PROFILE

三浦崇宏

The Breakthrough Company GO代表取締役 PR/Creative Director 博報堂・TBWA\HAKUHODOを経て2017年独立。『表現を作るのではなく、現象を創るのが仕事』が信条。 日本PR大賞・CampaignASIA Young Achiever of the Year・ADfest・フジサンケイグループ広告大賞・グッドデザイン賞 カンヌライオンズクリエイティビティフェスティバル 2013 PR部門ブロンズ・2016 ヘルスケアPR部門ゴールド・2017年 プロダクトデザイン部門ブロンズ・2017年ACCクリエイティブイノベーション部門グランプリ

    PROFILE

    青木真也

    総合格闘家、プロレスラー。小学生の頃から柔道をはじめ、2002年に全日本ジュニア強化選手に選抜。早稲田大学在学中に総合格闘家としてデビューし、「修斗」ミドル級世界王座を獲得。大学卒業後は静岡県警に就職するも2カ月で退職。再び総合格闘家へ。「DREAM」「ONE FC」の2団体で世界ライト級王者に輝く。2017年11月24日の「ONE Championship」シンガポール大会でウエルター級王者のベン・アスクレンに挑戦する。著書に『空気を読んではいけない』(幻冬舎)

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