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monopo × Toboggan inc. × UltraSuperNew

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街を歩くと、日本人以外の人々の暮らしが当たり前の光景になっている、2018年の東京。「2020 Tokyo」に向け、日本に来る外国人が増えつつある今、ただ訪れるだけではなく、ここで働き、遊び、暮らしている彼ら彼女たちの目には、現在の東京の景色はどのように映っているのだろうか? 東京を拠点にしつつ、世界を舞台に活躍するクリエイティブカンパニー「UltraSuperNew」、「monopo」、そして「Toboggan inc.」で働く外国人クリエイター3人(写真左から、マリカさん、チェイスさん、デボラさん)から見た日本人、また日本のクリエイティブについて“いま感じていること”を聞いた。


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ーーまずは出身と来日の経緯、また現在の仕事について教えてください。

デボラさん(Toboggan inc.):シンガポール出身で、映像制作会社でプロダクション・アシスタントをやっています。シンガポールの大学での専攻は演劇でしたが、卒業してからは全く関係ない、医療関係の仕事に就きました。でも私は子供の頃からずっと物語を作るのが好きで、小説を書いていたんです。それで、その会社で転勤になって日本で働いている時に、やっぱり物語が作りたいという気持ちが残っていたので、映画監督の講義やシナリオ講座を受講した後、転職しました。英語と中国語が使えるので、海外の案件をやっている制作会社が良かったのですが、そもそも日本ではそういう会社が少なく、その中でトボガンを見つけて入りました。

マリカさん(UltraSuperNew):カリフォルニア出身で、18歳の時に大学のためにニューヨークに引っ越した後、そのまま7年間住み、2016年に東京に来ました。ニューヨークではパーソンズ美術大学に通い、少しだけセレブのスタイリストのアシスタントをしていて。広告代理店で少し働いた後、3年ほどグラフィックデザイナーをしていました。その後、広告代理店で再び働きたいと思った時に、現在働く会社のウェブサイトを見つけたんです。いろんなクライアントや面白そうなプロジェクトがあって、アメリカではできない仕事のように思えました。日本人特有の好みやイベント、プロジェクトなどが面白そうで、いろいろと学べると思い、現在の広告代理店に入りました。UltraSuperNewではソーシャルコミュニケーションチームのコンテンツエディターをしています。クライアントのソーシャルメディアのチャンネルのコンテンツを作ったり、撮影に行ったり、プランニングをしたりするのが主な仕事です。

チェイスさん(monopo):バンクーバー出身で、中学生のときの交換留学プログラムや20代の時の旅行、そしてワーキングホリデーで1年日本に滞在していたという経験があって、人生の大半の間ずっと東京に惹かれていたんです。だから日本で暮らすことは僕の人生にとってミッションのようなもの。本気で日本で暮らしたくて、日本語を勉強しながらコピーライターとしての仕事をフリーランスでやっていた時、クリエイティブ業界にコネクションを広げていたらmonopo代表の佐々木に出会ったんです。そしてある晩、僕たちが飲みながら街としての“東京のブランディング”について話をしていた時、今は原宿ガールやジャニーズ、寿司、電車などの使い古されたモチーフを使った表現に重点が置かれているけれど、「東京にはもっとたくさんの色んなレイヤーがあるよね」と話が進み、『powerdby.tokyo』というプロジェクトを思いついたんです。今はこのプロジェクトのために、彼が僕を雇う形で働いています。

ーー母国と日本の違いで感じられていることってありますか?

デボラさん(Toboggan inc.):日本って、すごく丁寧です! シンガポールはどちらかというと、おおらかだと思います。日本の監督と一緒に働いていた時、とても丁寧に自分のやりたいように全部やっていくので、結果的に制作時間が長くなるなあと思っていましたね。時間をかけてもいいと思うんですけれど、かけすぎるのはどうかと思う時もあります。私たちが妥協することに関して、日本人はよく思っていないですよね。クオリティに関して日本人は絶対妥協しないし、すごくこだわると思います。例えばあの有名な寿司店の『すきやばし次郎』も、映画になったしオバマ元大統領も利用したのだから、今チェーン展開すればもっと稼げるのに「私の店はここだけです」というスタンスです。しかも20分で食べることに対していろんな苦情があっても、「これが私たちの考えるベストな寿司の提供方法なので、変える気は一切ありません」と言って譲らない。

チェイスさん(monopo):日本人って、すごく誠実なんだと思います。つまり“誰かのためにやるというよりはむしろ、自分のためにやる”というような誠実さですね。誰もあなたのやっていることを知らなくて、手を抜こうが抜くまいが誰にも知られることがなくても、夜寝る前に、正しいやり方でやったと“自分が”知っていることが大事なんじゃないでしょうか。そしてその誠実さは、お客さんやクライアントにも伝わっている。日本人は他の国の人よりも、そういう誠実さに対して敏感ですよね。よく行き届いていたり、反対に手を抜いていたり、何かの製品に安い素材が使われていたりすることに対して、気がつきやすいと思います。

マリカさん(UltraSuperNew):私は、日本は歴史や文化からの影響がとても強いので、解釈を履き違えないようによく気をつけないといけないと感じています。例えば撮影する時に、着物の着方や、春は桜を使うとか、そういう見えないルールのようなものが厳密に存在している。ちょっとでも間違えたら、SNSでのコメントがすごいんです……。習慣や季節、その季節にどんな果物を食べるかなど、そういう色んな文化的背景を確認しないといけないですね。でも反対にそれは、トレンドがたくさんある、テーマがたくさんあるということでもあるので、良いことだとも思っています。

ーー日本でクリエイターとして働いたりしている中で見えてくる、良いところってありますか?

マリカさん(UltraSuperNew):日本の好きなところは、すごく慎ましくて、謙虚なところ。ニューヨークに居ると、毎日仕事終わりに高いバーに飲みに行くような、たくさんお金を使う生活をしている人が多くて、それについていかないといけないプレッシャーが大きい。日本の場合は、お金を持っていてもきちんと自分で料理するというような、普通の生活を送っている人が多いように感じます。

チェイスさん(monopo):日本って経済的階級が割とフラットですよね。例えば、麻布十番と北千住からそれぞれ誰かを連れてきて、同じ部屋に入ってもらい、交流したとしても、彼らの癖や振る舞いはほとんど変わらない。他方、同じLAにあるビバリーヒルズとコンプトンからそれぞれ誰かを連れてきて同じことをしたら、絶対に混同は起こりません。彼らは、全く別の人間です。そういう観点で言うと、東京はロンドンやニューヨークのような世界の主要都市とは違って、サブカルチャー文化が生き生きとする土壌があるんですよね。他の都市は生活コストが非常に高く、経済状況や年収によって住む場所が左右されるから、本当の自由がないんです。でも東京は住むのに非常に手頃な都市なので、属するコミュニティや興味のあるライフスタイルに合わせてどこで生活するかを選ぶ自由があって、それが東京のクリエイティブコミュニティの燃料になっていると思います。

ーーでは反対に、苦手な部分や良くない部分は?

マリカさん(UltraSuperNew):日本の嫌なところは、男と女の考え方や感じ方に対する決めつけです。男は甘いものが好きではなく、女は辛いものが好きではないなんて、間違っていると思う。サラリーマン、キャリアウーマンという言葉も嫌いですね。最近聞いた言葉だと“スイーツ男子”というのがありますが、別に男でもスイーツを食べてもいいですよね。勤めている会社はグローバルな環境なのでそういうことはあまりないんですが、日本人の友達と話すとそういう言葉をよく聞くので、いつも反対しています。あと、日本人はたくさんの情報が必要だということ。電車の広告なんてとても文章や文字が多い。私はそれが苦手ですが、日本人が好きなことと私が良いと思うもの、そのバランスを見つけることも挑戦になっています。

チェイスさん(monopo):デジタル・コミュニケーションに関して、日本は現代的なものから、常に2歩くらい遅れをとっていることで有名ですよね。今マリカさんが言った文字が多いという話でいうと、例えば日本の大手通販サイトを外国人が見たら、まるで1000もの出来事が同時進行しているように感じてびっくりするんです。日本でいちばん売れているカジュアルウェアマガジンですら、表紙が大量のテキストで覆われていますし。ニューヨークやロンドンから遊びに来たデザイン仲間とコンビニに行くと、彼らは絶句します。僕が働くmonopoがたくさん賞を獲る要因には、在籍しているフランス人デザイナーの功績も大きいと思っています。やはり最も現代的なものとして受け入れられる、世界基準の感覚というものがあると思います。

デボラさん(Toboggan inc.):私が思うに、やっぱり日本人は彼ら自身だけでやっていけると未だに思っているから、というのがその大きな理由だと思います。日本は昔、鎖国していたことがあったでしょう。そこから日本のお年寄りはあんまり考えが変わっていないんじゃないのかしら。「私たちは、自分たちで十分やっていかれるのに、なぜあなたたちのことが必要なのかしら?」って思ってそう。

チェイスさん(monopo):そうですね。だから僕たちは今とても面白い時代、東京のビジネス史の分かれ道にいます。500年もの間、日本は国内市場のためだけに商品を作っていたから。外の市場に向けて作る必要がなかったんだと思います。でも、国内の市場が段々縮小している現在、日本人の歴史の中で初めて、外に目を向けて海外展開することが求められています。だから僕のような、東京をよく知っている外国人で、海外にたくさんのコネクションを持っている人間にとっては、外国の文化的な背景や言語が分からない日本の会社を助けることが、大きなビジネスチャンスに繋がると考えています。

ーーこれから日本で手がけたい仕事は、どういうものでしょうか?

マリカさん(UltraSuperNew):クライアントに関して言うと、日本のブランドと働いてみたいです。今は外国のブランドを担当していて、外国から来たブランドを日本人向けにどういうふうに展開すればいいかという仕事が多いので。外国のブランドと日本のブランドとでは、仕事の内容や手法が結構変わると思うんです。

チェイスさん(monopo):私は東京を正しい姿で見せることで、東京のブランドイメージを作っていきたいですね。今、『powerdby.tokyo』をやっている理由もそこにあります。高円寺の人々と有楽町の人々は異なる世界観や価値観に属する人々ですが、同じ形で繋がったりコラボレーションできるプラットフォームやスペースのようなものがあれば、マジックが起こると思うし、僕はそれを起こしたいと思っています。東京はブランド化するのがすごく難しく、“東京”と聞いて最初に思い浮かべるイメージが一定しません。例えば、パリジャン、もしくはニューヨーカーと聞いたら思い浮かべるイメージがある。でも“東京人”と聞いてもイメージがないですよね。だから僕は、さまざまなエリアを代表するような人々がライフスタイルや仕事についてプロモートしたり展示したりすることで、東京のいろんなコミュニティとコミュニケーションを取れる場を作りたいんです。「これが東京だ!」と言えるような場を。

ーー日本のクリエイティブ業界が今後変えていくべきこと、このまま伸ばしていくべきことについてはどう考えますか?

デボラさん(Toboggan inc.):日本はクリエイティブが独特な感じがあって、それはぜひキープしてほしいと思います。あと「2020 Tokyo」のテーマは日本のおもてなしですよね? それも続けて欲しいですね。一番変えた方がいいと思うことは、何か失敗が起きた時に「誰のせいか?」ではなく、どう改善するかという風に考えていった方がいいと思います。上下関係があること自体は問題ではないのですが、上から一方的に厳しくされていると関係が悪くなってしまう。例えばシンガポールでは社長や上司と飲みに行くと、そこでは人間同士の付き合いをしています。日本でももちろん飲みに行くことはありますが、そういう場でも職場の上下関係を保つことが多い。立場が下の方が水を注いであげないとダメっていう。そうではなく、プライベートでは友人のような関係の方が良いと思いますね。

マリカさん(UltraSuperNew):もっと、日本人と外国人が一緒に働くべきだと思いますね。よく日本人は間違っている英語を使っていることが多くて、英語を話せる人が聞けばすぐに間違いを指摘できるし、反対に文化や歴史に関しては、私たちが日本人に聞けば間違えないはずなので、普段から外国人と日本人のコミュニケーションをもっと深めていきたいですね。

チェイスさん(monopo):僕も、東京のクリエイティブコミュニティやビジネスを外国人と繋げて、彼ら個人個人をサポートしたいです。もっと快適に、もっと我々と共にやっていこう、という風に。なぜなら、一緒のビジネスをするという流れはもう起こっているし、これからもっともっと大きくなっていくだろうから。日本のデザインの美意識が強いブランドと、より多様な見識や海外の人材を結びつけると、世界の中でもとても素晴らしい、クリエイティブ業界の一大ムーブメントになると思いますよ。本当に大事なのは、日本独自の感性だけではなく、外国人が持っている洞察力と、日本の美意識、クリエイティブ業界とがコラボレーションをすること。それこそが未来だと思います!

PROFILE

monopo

2011年設立。新しい概念や体験を作ることで、その世界観を“monopo”というブランドとして確立し、世界中をフィールドに、文化や言語を超えた感動を生み出す。インハウス・プロジェク『powerdby.tokyo』では、ビームスやハーヴェイ・ニコルズとコラボレーションし、世界に向けて現代のリアルな東京ブランドを発信している。

https://monopo.co.jp

    PROFILE

    Toboggan inc.

    代表の品川一治氏がToboggan USAの前身であるKazcoordination inc.を1996年にハリウッドで立ち上げ、その後2010年に日本に拠点を移し、設立。“クリエイティブの世界に、グッとくる解決策を。もっと、人間味あふれるサポートを”をモットーに、ブランドのプロモーションからアーティストの映像プロデュースまで、あらゆるジャンルのクリエイティブを世界中に届ける。

    https://tobogganz.com

      PROFILE

      UltraSuperNew

      2007年に設立。原宿を拠点とするクリエイティブエージェンシー。現在は、原宿とシンガポールにオフィスを構え、グローバルブランドのアジア圏マーケットに向けたクリエイティブコミュニケーション開発を手がける。原宿、シンガポールのオフィス一階スペースにはギャラリーを併設し、国内アーティストの展示を実施。2017年、新たなアート・テック プラットフォーム「MeshMinds」を共同設立。

      http://ultrasupernew.com/ja/

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