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子どもたちが教えてくれる? フォークのクリエイティブラボの始点と視点

株式会社フォーク

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Web制作会社の枠にとらわれず、クリエイティブラボ(以下CL)の活動から自社の新たな可能性を探る会社がある。1999年の設立以来、Web制作・開発からサーバー構築などをワンストップで提供している、株式会社フォークだ。同社のCLは「体験を通じて未来のクリエイターを育てる」をテーマにしたワークショップなどを展開している。CLを率いるのは、同社テクニカルディレクターの石射和明さん(写真・左)。フォークの新たな試みとして、3年前に立ち上げを任された。今回は、産業技術大学院大学(AIIT)助教の金箱淳一さん(同・右)を招き、今後のお互いの活動に対する想いを語った。両者がこれまで実施してきたワークショップの中で蓄積した、人と向き合うことで得られた体験は、自身のスキルをもっと何かに活かしたいと考えるクリエイターに新たな気づきを与えるのではないだろうか。 [Sponsored by フォーク]


テクノロジーをもっと身近に。未来のクリエイターを育てたい

ーーまずはCLの立ち上げ経緯と活動について、教えてください。

石射さん:CLを立ち上げたのは、3年前。これからは受託開発だけでなく、自社のプレゼンス向上に向けた新たな展開をしていきたいという思いのもと始まりました。立ち上げる際に掲げたコンセプトは「テクノロジーをもっと身近に」というもの。
これまでは、受託領域拡大のための新技術の調査などいわゆる研究開発領域を進める一方、技術情報から参加・実施したイベント詳細などさまざまな取り組みを紹介するオウンドメディア「4009ヨンマルマルキュー)」を立ち上げ。テクノロジーの新しい使い方などを模索する活動として、アートに特化したハッカソン「3331a Art Hack Day 2015」で知り合った社外のメンバーと共に美術館や芸術祭などに作品を出展しました。
最近では、未来のクリエイターを育てるワークショップ「FUTURE FACTORY」の活動のひとつとして、IoTデバイスと身の回りの日用品を使ったワークショップを子ども向けにおこなっています。

この子ども向けワークショップには毎回約1割もの社員が参加しています。今後はもう少しフレキシブルなコミュニティとなるように、関わるメンバーを増やし、個々が活躍しやすい場にしたいと考えています。そのため、ユニット名も以前の「R&Dユニット」からより多様なメンバーに参加してもらえるよう、この5月から「クリエイティブラボ」に名称を変更。言葉としての親しみやすさを持たせました。

金箱さん:さまざまな方に参加してもらうというのは、とてもいいですね。僕は今年の3月まで、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)の研究員、この春から産業技術大学院大学の助教として、ものづくりについて教えているのですが、教員をやり続けている理由もそこに近いんです。
大学院ではディスカッションを通して自分以外の考えにたくさん触れることができる。その経験が自分自身の新しい発想につながるからです。僕は情報科学芸術大学院大学(以下、IAMAS)を卒業後、玩具開発会社の企画職に就いていたのですが、技術的専門性のある人って素晴らしいなと感じた一方、自分の道は技術のエキスパートになることではないと感じたんです。
それぞれ強みを持った人たちと一緒に物事を進める仕組みを、どうしたら実現できるか。それを考えることが、仕事にできるんじゃないかなと。いろいろな人と話して、分野が異なる人達の共通言語を作っていく仕事ができるのではないかと意識するようになりました。
また、これからの働き方という側面で、自分にとって最適な環境を作ることは大切だと考えています。クリエイティブラボも、それぞれにとって最適な環境を、仲間を増やしながら作っていくのがいいのではないかなと思います。

 

人や現場と向き合うことで、得られる視点

ーー働き方として、お二人はさまざまな方とリアルに接しながら、ものづくりに取り組まれていますよね。日々どのような感覚でお仕事をされているのでしょうか。

石射さん僕はいい意味で「働いている」という感覚がないですね。遊びというと失礼かもしれませんが、それに近い感覚がありますね。ものづくりをする過程を一緒に楽しめる仲間がいて、そこに組織や会社が付帯しているイメージ。ただ、もちろん「会社のためにもいいこと」とはどんなことだろう、ということは常に意識していますし、会社だけでなく組織、人も同様です。でも基本的には、自分がやりたいことをやる場として会社があると考えています。

金箱さん僕の場合、自分がやりたいことを共有する場として、会社やプロジェクトが存在している感覚です。学生時代に経験した、ロフト(ゼミ室)のような場所に集まってプロジェクトを進める感覚に近いですね。玩具会社にいた頃もそんな感覚で働いていたので、僕もいい意味で、働いている自覚はないです。

ーー学生時代に得たプロジェクトの感覚が、社会人になっても続いているのですね。金箱さんは、玩具会社時代に大切にしていたことってありますか。

金箱さん製品に対する反応を、自分の目で見ることです。たとえば自分が関わっていたおもちゃが発売されるときに、おもちゃ屋さんの試遊台の近くに隠れて見ていたこともありました。それくらい、使われ方や反応を見たいと思っているんですよね。子どもたちがどう振る舞うかとか、プロダクトの意図がちゃんと伝わるか、反応をきちんと見て子どもと向き合ったおもちゃ作りをするべきだなと考えていて。

石射さん子どもの反応からは多くの学びがありますよね。ワークショップの中で子どもと触れていると、それぞれタイプの違いを感じ、発見は多いです。周りを気にせず自分の世界に入って作品を創り上げる子や、友達と似たような作品を創って楽しんでいる子。様子を見て、この子は独創性寄りなのかな、協調性寄りなのかなとか、考えるきっかけにもなっています。

金箱さんそういう意味では、僕はワークショップそのものを“道具”と捉えていて、同じ道具を使っても、アウトプットはそれぞれ異なるべきだと考えているんです。それは、視野・視座がみんな違うという表れでもあるし、そこでどんなアウトプットが出てくるのか興味がある。

周りにある全ての音を「触り心地」に変換するTouch the sound picnic。聴覚障害者を主な利用者としてコンサートや美術館での活用が進んでいる

石射さんワークショップなどで現場に触れると、作る側のモチベーションも変わりますよね。触ってくれているのを見て感じたほうが「もっとこうしたほうがよかったのか」とか。マーケティングの数値など定量的な情報だけを見るのではなく、生の現場を体感することで見えるものがあるというか。

金箱さん「プロトタイピング」の考え方ですね。作ったものに触れてもらって、その所作を感じることで次のデザインに活かしていく。高齢者向け玩具の開発プロジェクトに参加していた時は、現地まで使われている様子を見に行って、その様子を開発側にシェアしました。現場を実際に見ると気づきも生まれますし、開発者のモチベーションにもつながるんですよね。

 

専門スキルを軸に、社会との接点を探っていく

ーー石射さんは、「FUTURE FACTORY」のワークショップの中で、参加メンバーの方の変化を感じることはありますか。

石射さん今の金箱さんのお話と近いところで、仕事に対するモチベーションや取り組み方が変わったりしていますね。やはり現場を体感した時に感じるものってあると思うんです。ワークショップの準備や取り組みについての話は聞いていても、空気感ってその場に行った人にしかわからない。
昨年は子ども向けのワークショップを5回実施しましたが、回を重ねる毎に、自身が体験したことをベースに、自分の関わったところだけでなくワークショップ全体への改善案まで積極的に発言してくれるようになっています。

金箱さん自分ごと化できるというのは大切ですね。

石射さんそうですね。自分ごと化できていると「僕はプログラマーだからこの部分はできない」ではなく「プログラマー視点からこういう改善ができるんじゃないか」とアイデアが出せたりすると思うんです。つまり、専門スキルを軸にして、普段とは異なるバリューの発揮の仕方が試せる場になる。
スキルを発揮できる場は限られるかも知れませんが、バリューを発揮できる場はいくらでも自分で作れます。取り組みを自分ごと化できると発言内容や積極性も変わってくるし、充実感も変わる。自分の違う側面を見つけるいい機会になると思うんです。

金箱さん専門的な観点を持ちながらも「そこを起点に何ができるか」と意識していると見えてくる視野は変わってきますよね。

 

ーー今後クリエイティブラボは、どのように展開していきますか。

石射さんCLを立ち上げてから3年経過した中で、ワークショップを始めて1年。まだまだ手探りの中で進めているので、ラボ自体もワークショップの活動も、拡大していくという意味ではスピードはゆっくりです。ただ、こうした活動を継続することでさまざまな取り組みをおこなっていけると思うので、まずはこの継続性が重要だと考えています。
今後はこうしたラボの活動に参加したメンバーの中から、僕がいないところでも活躍の幅を広げていくような人が出るといいなと。より多くのメンバーに参加してもらい、その中でそれぞれがやりたいことを見つけられる道筋をつけられる場にしたいですね。

金箱さん「僕、こんなことで役に立てます」とプロジェクトで言えるようになることって、すごいなと思っていて。仕事とは「自分ごと」という意味だと思うんですよね。自分が持っている技術は、世の中でどういう風に役に立つんだろうと考えることができるのは、とても豊かなことだなと。

石射さん本当にそうですね。クリエイティブラボには「あれもこれもやりたい!」という人が合っているのではないかなと思うんです。領域を限定して取り組むというよりは、全過程に関わりたいというような人ですね。
自分のスキルを活かして普段とは異なる関わりを持つことで、メンバーそれぞれが活躍できる・頑張れる環境を作っていければなと考えています。

PROFILE

石射和明

2006年にプログラマーとしてフォークに入社。主に企業プロモーションにおけるフロントエンド・バックエンドシステムの構築、サービス運用支援を行う。2010年より大手広告代理店にて、テクノロジーを主軸とした大規模プロモーションおよび新規事業への取り組みにおいて、主にプロデューサー・テクニカルディレクターとして参画。現在はCLユニットにてWeb主体の自社事業ドメインの枠を超えた活動を始め、テクノロジー主体のクリエイティブ活動を推進。


    PROFILE

    金箱淳一

    1984年長野県 北佐久郡浅科村(現:佐久市)生まれの楽器インタフェース研究者 / Haptic Designer。博士(感性科学)。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修了後、玩具会社の企画、女子美術大学助手、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科研究員を経て、産業技術大学院大学創造技術専攻助教、現在に至る。障害の有無にかかわらず、共に音楽を楽しむためのインタフェース「共遊楽器(造語)」を研究している。

    http://kanejun.com/
    http://hapticdesign.org/designer/file013_kanebako

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