FEATURE

「異物感」に満ちたチームこそが、社会を変える ──TEKOが語る広告クリエイティブの新たな可能性

TEKO

記事メイン画像

広告会社における新たなクリエイティブの可能性を追求すべく、博報堂グループに所属する総勢5名のクリエイティブディレクターとマーケティングディレクターによってつくられたプロジェクトチーム「TEKO」。2017年の設立から1年が経ったいま、彼らは自身がこれまで培ってきたクリエイティブは広告にとどまらずあらゆる領域で価値を発揮できると確信しているという。「企業経営」にもコミットしているという彼らが編み出した、社会を変えるために必要な「チームのあり方」とは。


「手応え」と「壁」

──今日お集まりいただいたみなさんは同期でもあるそうですね。

大澤さん:そうですね。3人とも1996年入社で、みんなクリエイティブディレクター(CD)です。

原田さん:20年ばらばらの仕事をして、それぞれが経験を積みつつ、いい年になって「再結成」したというか。‥‥まぁ、元から解散も結成もしてないですけど(笑)。ぼくと吉澤はコピーライター出身なので、案件のテーマやそれに対する答えを言葉でつくっていく。ただ、吉澤は事業変革やイノベーション領域の仕事に携わっていて、ぼくは「QUANTUM」にも所属しているので商品開発や事業開発、UI/UX開発もやっている。それぞれ得意なエリアはちょっとずつ違いますね。

大澤さん:ぼくはブランドや商品・サービスの開発、空間の開発などに加えて、組織変革のお手伝いをしたりもします。

原田さん:今日来れなかった2人にも、触れておいた方がいいですよね(笑)。広告領域に留まらず、社会視点でトランスフォーメーションデザインを推進する『恋する芸術と科学』ラボを主宰する市耒(クリエイティブディレクター)と、唯一マーケティング畑でキャリアを積んできて、マス〜WEBまで一貫したプランニングができる中村(マーケティングディレクター)。この5人が合わさったチームがTEKOです。

大澤さん:それぞれが色々なアプローチで広告表現に携わってきて、広告でできることは一通り経験してきていると思います。ただ、同時に広告が世の中やクライアントを変える能力の限界も少なからず経験してきて、じゃあ、ぼくらが広告で培ってきたクリエイティビティが次は何に使えるのかって考えた結果、できたのがTEKOだったというわけです。

原田さん:お互いが20年間それぞれの領域で色々な経験を積んでいるからこそつくれるチームもあるんじゃないかと思ったんですよね。

──スタートから1年ほど経って、すでに色々な案件を手がけられていると思うんですが、感触はいかがでしょうか? 

大澤さん:いまは「手応え」と「壁」の両方を感じています。「手応え」はぼくらのクリエイティビティが使える場所はいくらでもあると知ったこと。「壁」は、5人で取り組むことでカバーできる領域は広がっているものの、それでも足りない部分をどうやって埋めていくか。それはこれから考えていかなきゃいけないことだと思っています。

──実際のところ、企業とはどういった取り組みを進められているんでしょうか?クリエイティブブティックだとアウトプットがわかりやすいですが、TEKOさんの場合はちょっと事情が違いますよね。 

大澤さん:新しいサービスを始めたいとか、組織構造が変わったとかのタイミングでご相談いただくことが多いんです。だからクライアントさんの内部の話なので、秘匿性が高く、公表できないことがほとんどなんですね。クライアントさんに深く関わって、一緒に動けている一方で、僕たちができることをどう説明していくか、は今後の課題だなと思っています。

吉澤さん:経営領域に踏み込むこともあるので、言えないことも多いですね。

原田さん:あと、広告キャンペーンだと、大体1〜3カ月くらいあればアウトプットが形になるじゃないですか。いま我々がやってるものって、世にでるのは1年後だったりするんですよ。実際、あるプロジェクトでは広告じゃなくてサービスをつくりましょうと言ったことによって、ローンチが2年先になったりしている。秘匿性と、スパンという二つの要因で説明がしにくいところはありますね。

異なる視点から同じ問題を見ること

──みなさんが博報堂に入社されたときは「広告代理店」という大きな看板があったと思うんですが、徐々に「広告会社」になって、いまは広告会社ですらなくなりつつありますよね。

大澤さん:「未来を発明する」と言ってます。

原田さん:20世紀にぼくらが博報堂に入ったときは、「人に伝えること」が基本でした。マスメディアを通してメッセージを届けることでモノが売れていた。いまは伝えるだけじゃなくて人を「動かす」ことが求められるし、人が行動した結果にクライアントが期待するようになってきた。企業の成長のパートナーになることが求められているのかなと感じます。

吉澤さん:博報堂という会社は社会の変化とクライアントに適応し続けることで進化してきた会社なんです。クライアントの課題が広告から事業に、そして経営領域にまで広がっていくにつれて対応するサービスも広がってきた。ただ、個別のクライアントに対しては色々なソリューションをもっているのに、隣の人が何をやっているのかわからなくなってきてもいて。機能が分化してしまったところをもう一度繋いで再編集していくことが求められている。

こうした状況のなかで、TEKOはみんな20年選手なので、それぞれが築いてきた社内ネットワークを寄せ集めれば、博報堂の大体のリソースにアクセスできる。TEKOには会社が進化したゆえに失われた統合力を取り戻すという点もあるのかなと感じています。

吉澤 到さん(TEKO・クリエイティブディレクター)

──TEKOが掲げられている「Co-direction」という言葉もそのあたりから出てきているんですか?

原田さん:あれは「喧嘩する」って意味なんですけどね(笑)。

大澤さん:特に決まった定義があるわけじゃないんですけど(笑)、広告会社のクリエイティビティって割と属人的に進化していて。特に日本のクリエイティブってCDがチームをつくる仕組みになっているんですが、チームワークがよくなって得意技ができていく一方で、CD個人がどう進化するかという問題があるように思います。海外だとCD同士が議論する機会が普通にあるけれど、日本だとそういう機会が意外と少なくて、CDになったあとって変化するのが難しいんですよね。ですから、全員チームをもっているメンバーが集まったらどうなるのか、関心がありました。

原田さん:TEKOは全く違う5人が集まってるのですごく参考になりますね。自分はこうやるけど大澤ならこうするみたいなことが勉強になる。自分とは違う角度から見た景色がわかるというか。違う角度から同じ問題を見るのがCo-directionなのかなと。

原田 朋さん(TEKO・クリエイティブディレクター)

──ディレクターが横並びということですね。

吉澤さん:CMをつくることが決まっていたらひとりでもいいんですが、もしかしたら課題を解決するうえで必要なのは商品開発とか社内の人材教育かもしれない。色々な角度から見ると自分が思ってもみなかった方向から解決できたりもする。

原田さん:CDがふたりいるからといって、ふたつのコピーが出てくるというわけではなくて、複数の視点を組み合わせてブラッシュアップできるんじゃないかという考え方なんです。

──そういうふうに課題解決の領域が広がっていくと、従来の広告のようにクライアントの宣伝部や広報部以外の部署との関係性を深めていく必要もありそうです。

原田さん:TEKOは経営者の方とお話できることを目指してますね。より判断のレイヤーが高いというか、部門を超える判断ができる方じゃないと意味がないので。だからディレクターが3人いる方が経営者の方と対峙する上で死角がなくなるんですよね。

大澤さん:経営者の悩みを、既存の広告会社の区分で捉えると対応しきれない部分がどうしても出てきてしまう。また、コミュニケーションの手法自体も、凄まじく進化しているので、ひとりではその進化を受け止めきれないこともあります。TEKOはそれを複数で受け止めてみる、というチャレンジなんです。特に、相対する人のレイヤーが上がれば上がるほど、ひとりで仕事を受け止めるのが難しくなる気がしています。ただ、それは昔よりも僕たちに期待することが増えている、ということでもあるのかなとも感じます。

大澤 智規さん(TEKO・クリエイティブディレクター)

「正しい選択」ではなく「望ましい選択」をつくる

──TEKOの取り組みって、いわゆるクリエイティブブティックのそれとは違いますよね。経営にもかかわられていたり、どちらかというとコンサルティングに近いような印象を受けました。

原田さん:確かにエリアはコンサルと近しくなってきていますよね。でも、世の中に出たときのことをイメージできることだったり実際に形にできたり、広告会社にいるぼくらだからこそできることもあると思っています。

吉澤さん:広告で培ってきた創造性を使ってエグゼキューションベースで話ができるのは、コンサルと異なる部分かもしれないですね。

大澤さん:コンサルの場合はある程度原型があるものを効率化していくことが多いですが、ぼくらは新しいアイディアを足していくことに重きをおいています。ひょっとしたらこれまでそういうことを専門にやる会社とか職業ってあまりなかったかもしれないと思うんですよね。すべての経営者がマーク・ザッカーバーグやジェフ・ベゾスのようなクリエイティビティを持っているわけではないですから。

昔は一人だった、「社長」がCEOやCFOのように分業する時代になったわけですから、アイディアやクリエイティビティの部分を、別の人間が担うこともできるように思います。CDがアイディアを担当することもできるんじゃないかと。企業を成長させるアイディアを出すことを専門にする人って意外と多くなかったのかもしれないな、と思います。

──社会が変わっているからこそ、TEKOも必要とされているのかもしれませんね。

吉澤さん:いまは単に効率性とか収益性を追求するだけじゃなくて、事業モデルそのものを再検討する必要も出てきています。最近日本でもデザイン思考が流行っていますけど、これまで以上に経営における創造性が重要になってきているんじゃないかと。

大澤さん:もちろん企業が成長するうえでコンサルも重要なんですが、業界が縮小している場合は同時に経営におけるクリエイティブも求められてくる。ですが、それを経営者と話せる人がいまのところ少ないのかなと思います。肩書としてもほとんど聞いたことがないですから(笑)。

吉澤さん:先の見えない変化の時代には、「こういう未来をつくりたい」という意志が重要になってきている。その点、ぼくらは「生活者発想」ということをずっと言ってきたので、「こういう未来だといいよね」という想像力を働かせることができるわけです。もちろん企業の経営に携わる方々は賢いし情報もたくさんもっているので、合理的に「正しい選択」はできる。われわれがつくるのはむしろ「望ましい選択」で、望ましい未来をつくっていくのがわれわれの力なのかなと思っています。

「異物感」こそがチームには必要

──実際に仕事を進められる際は若い人ともチームをつくると思うんですが、みなさんはチームにどういうものを求めてますか?

原田さん:ぼくは最近「傾聴力」を大事にしていて(笑)。ほかの人が自分に何か話してくれるかどうか、自分に情報が流れてくるかどうかがすごく大事になってきている。そうするとオープンでいることが重要になってきていて、割と話しかけられやすい方がいいのかなと。この前とある仕事を受けた際に、大先輩のコピーライターにも、入社数年目の若手にもチームに入ってもらったんですが、みんな出してくる答えが違っていて。もちろんCDなので決定しなきゃいけない瞬間はあるんだけど、僕はギリギリまでみんなの話を集めたいんです。好きなことを言ってもらえるようにしたいなと。リーダーというと「こっち来いよ」と引っ張っていく感じがするけど、人の話を聞くことでリードしていくというか。

吉澤さん:いま会社に入ってくる人たちを見ていると、自分でなんでもつくれる人が多いなと思っていて。スモールチームでPRもクリエイティブもできるようになると、仲がいいとか肌が合う人でまとまってスピーディに仕上げていくことが増えますよね。でも、大きく何かを動かそうとしたらもっと色々な視点を入れないといけない。ぼくらみたいなおっさんが経営的な視点を入れるとか。あえて異物感のある人と結合することで新しいものを生み出すようなチャレンジが重要なのかなと思います。

原田さん:違和感を感じなかったら危険だよね。

大澤さん:TEKOは違和感の塊だからね(笑)。いまは広告会社が取り組んでいる領域がこれだけ広がっているので、ひとりのCDがやれることはそこまで広くなかったりする。ひとりで全部やろうとすると世の中は動かせないですから。

──それがチームワークの秘訣だったりもするんでしょうか。

原田さん:「無知の知」じゃないですけど、自分の知らないことを意識できるのは重要ですよね。自分の視界の外にあるものがわかったときに楽しめるか。それを意図的につくるために、違う世界の人と無理やりにでも一緒に仕事してみるとか。

吉澤さん:違和感とか異物感を恐れず続けていると、ある瞬間うまくいき始めるときがあるんですよ。それが一番気持ちいい。最初はうまくいかないチームの方が経験的にはいいような気もします。

大澤さん:TEKOを始めようとしていたときに、「このメンバーで会話がどう成立するかわからない」と言われて、その瞬間にぼくは「いけるな」と思ったんです。異なるものをどれだけ楽しめるか、言葉を通じないことを楽しめるか。それができるのがクリエイティブなのだと思います。

PROFILE

TEKO

広告・マーケティング領域だけでなく、クライアントの事業戦略や商品開発、サービス開発、インナー改革など、幅広い分野で活動している、博報堂グループの5人のクリエイティブディレクターとマーケティングディレクターが協働するプロジェクトチーム。企業活動全般をプラニングのフィールドとして、戦略やコンサルテーションにとどまらず、具体的なアイデアを開発するとともに、各々の異なる専門性を活かし、その実施までをサポートしている。

http://www.teko-leverage.com/

    写真・東山純一 取材・横石崇 文・石神俊大 編集協力・市村光治良 写真提供(TOP)・TEKO

    関連記事

    関連記事