FEATURE

CEKAIが実践する、「共鳴し合うものづくり」【後編】

世界株式会社

記事メイン画像

「CEKAIという箱を使い、熱量のあるものを作りたい」。こう話すのは世界株式会社(CEKAI)の井口皓太。彼はBAUSのクリエイティブディレクターでもある。現在CEKAIには、さまざまな肩書きをもったクリエイターが在籍。会社や組織を横断しながら、新しい働き方を実践するメンバーが集っている。いわく、「メンバーは公称20~30人。声をかけ、賛同してくれたのは100人(笑)」。そして今、多くの企業とプロジェクトを進めている最中にある。インタビュー後編では、「NIKELAB」(ナイキラボ)とのプロジェクトをとおし、CEKAI流のものづくりに迫った。


ーー前編では、新しい組織のあり方、そのチームづくりについて聞きました。後編では実際に手がけたプロジェクトを例に、CEKAI流のものづくりについて聞かせてください。

CEKAIらしいプロジェクトだと、今春手がけたNIKELAB  PRESENTS 「先」 FUTURE OF AIRが挙げられると思います。クライアントはナイキさん。プロジェクト名にも記されたNIKELABとは、ナイキの最新イノベーションを体験できるコンテンツのことで、オンラインストアのほか、世界7ヵ所に実店舗「NIKELAB MA5」(2016年12月、初の国内旗艦店が東京・青山にオープン)があります。

このプロジェクトでは、ナイキ「Air Max」シリーズの最新モデル「Air VaporMax」に着想を得て、特設サイトに各クリエイターが作品をアップし、最終的に1本の映像作品に結びつけていきました。

ナイキさんとのお仕事は二度目。初回は「NIKELAB MA5」が青山にオープンするタイミングで個人的に声をかけてもらい、モーションロゴを制作しました。

この仕事がきっかけとなり、今回のプロジェクトでは、初めにカンパニープレゼンをさせてもらったんです。「CEKAIにはさまざまな肩書きをもったクリエイターが在籍し、それぞれの領域を厭わず、共創しています」。こんな話をすると、ナイキの方たちがCEKAIに興味を持ってくれて。結果、「Air VaporMax」の日本でのプロモーションを総合的に任されるに至りました。

 

ーーどんなプロセスを踏み、プロジェクトを進めていきましたか?

NIKELABが世に送りだすプロダクトは、リリースされるやいなや、世界中で即完売するものばかりです。「いわゆるな広告ではなく、ブランドを進化させるような感度の高い表現にチャレンジしてほしい」。こんなリクエストに応えるため、プロジェクトの初期段階では、その指針となる設計図づくりに尽力しました。

プロジェクトのテーマは「FUTURE OF AIR」。CEKAIとして、このお題をどう噛み砕いて表現していけるのか。僕自身がディレクターを担当し、プロデューサーに三上太朗、アートディレクターに安田昂弘、プロダクトデザイナーには早川和彦をCEKAIのメンバーからアサイン。ワンテーブルで議論を重ねました。「FUTURE OF AIR」とは日本語に訳すと、未来の空気のこと。英語のコピーだけみると、ふわっとした軽さをイメージできるのは確かです。でも日本人の僕らからすると、「未来の空気」という言葉には特別な思い入れを抱く経験と現状がある。それゆえ日本発信のムービーでは、本国のように最新エアユニットを搭載した「Air VaporMax」の軽快さを表現するようなクリエイティブにはしたくなかった。コンセプトメイク中はこの手の話が尽きず、「言葉としての”未来の空気”をどう捉えるか」、四者四様の目線でキーワードを出し合い、クリエイティブブリーフを作成。そこで「先」というプロジェクトネームも決まりました。

そして本格的なチームづくりへ。本プロジェクトでは僕らCEKAIが持っているネットワークにも期待されていたので、「一度仕事をしてみたい」と思っていた若手実力派のクリエイターや世界で勝負するアーティストなど、これまで培ってきた”横のつながり”を総動員して「MAKE TEAM」しました。映像作家・デジタルアーティストの橋本麦くんだったり、ビョークと衣装コラボレーションした経歴をもつデザイナーの武田麻衣子ちゃんだったり。デイ・トリッパー・レコーズのセイホーくんにはムービーの音楽をお願いしました。分かる人には分かる、気鋭のメンバーだと思います(笑)

 

ーープロジェクト始動中、気を配っていたことを聞かせてください。

プロジェクトがスタートすると、さまざまな領域のスペシャリストが1つのゴールを目指し、共創していきます。そのゴールイメージをどれだけ深くチーム内で共有できるかが、勝負の分かれ道です。CEKAIが関わるプロジェクトは、まだ誰も見たことのない表現が多く、NIKELABのクリエイティブも同じように”感度の高い表現”にチャレンジしています。加えて今回の場合、各クリエイターが手がけた作品が融合し、1本の映像作品になるというプロジェクトだったので、同じ方向を見ながら進んでいかないと”1つの世界観”を表現できません。

それゆえ、全体の設計図となるクリエイティブブリーフが不可欠だったわけです。言語化した設計図も大切ですが、今回のプロジェクトではヴィジュアルコミュニケーションを軸にし、みなの共通認識を深めていきました。まずは安田昂弘が「循環する空気」をテーマに「先」のロゴを作り、僕がそれに「過去と未来の共存」というテーマを加え、モーションロゴを作りました。

これが本プロジェクト全体を通しての、指針になりましたね。また、今回は実写を撮る前にすべてCGで再現しました。このパイロット版をベースに、それぞれの領域のスペシャリストたちが独自に解釈し、お互いのクリエイティブを尊重し合い、1つの世界観を作り上げていきました。

かくして、NIKELAB  PRESENTS 「先」 FUTURE OF AIR は無事ローンチ。CEKAIの強みは、いちばん最後のフィニッシュをイメージできる人がたくさんいることかもしれませんね。

PROFILE

世界株式会社(CEKAI)

2013年、設立。会社や所属の枠を越えたクリエイターやマネージャーが共鳴する場を創り、自社発信のデザインワークを行なう。クリエイティブアソシエーションを標榜。グラフィックデザイナーや映像ディレクター、プロダクトデザイナー、プログラマー、ミュージシャンほか、多種多様なクリエイターが在籍。

http://cekai.jp

    関連記事:CEKAIに聞く、「ゆるやかに横断する、チームづくり」 【前編】

    写真・下屋敷和文 文・紺谷宏之

    関連記事

    関連記事