INTERVIEW

暮らしを愉しみ、自分たちらしく。ハッピーになる「みんなのデザイン」

minna

記事メイン画像

「人がハッピーになれるようなデザインが得意なんです」。穏やかな語り口でこう話すのは角田真祐子さん(写真・右)。続けて、「デザインに人を幸せにする力があるとしたら、それを提案する作り手自身も、仕事も暮らしも愉しんだほうがいいと思いませんか? だから、1番のハッピーマンでいようと思っています(笑)」と長谷川哲士さん(同・左)。ふたりは大学時代の同級生。美大を卒業し1年後、デザインチーム「minna(ミンナ)」を設立。夫婦になり、パパとママになった現在、ふたりへのオファーは引きも切らさず、グラフィックやプロダクトなどの領域を横断しながら、企業や地域のブランディング、イベントのアートディレクションなどに携わり、大学で教鞭もとっている。本人たちは謙遜することしきりだが、デザイン賞も多く受賞。社名が示すように、”みんな”に愛されるデザイン会社に躍進中だ。本稿では、デザインワークや公私ともにパートナーで働く働き方について聞いた。


ーーまずは「minna」設立の経緯から聞かせてください。

長谷川さん:ふたりともムサビ出身の同級生で、僕は工芸工業デザイン学科でインテリアデザイン、角田は空間演出デザイン学科で雑貨や家具を専攻していて。付き合いはじめたのは卒業する頃だったよね?

角田さん:このあたりの話は割愛(笑)。長谷川について話すと、大学3年の頃から先輩とデザインの仕事をしていて、大学を卒業して1年ぐらいのタイミングで独立するっていう話になって。その頃私は、大学の研究室に残って助手として働いていました。

長谷川さん:当時はお互いの仕事を素直に認められず、ライバルのような関係でした(笑)。僕自身について言えば、「独立してひと旗揚げたい」っていう野心よりも、生活者の視点に立った時にデザインされていない部分がたくさんあることに改めて気づき、デザイナーとしてもっとみんなの役に立ちたいっていう想いが増していって。こんな話を角田とするようになり、minna設立に繋がっていきます。

角田さん:長谷川は目標に向かって熱意で走るタイプで、私はそれに比べると客観的に考えるほう。タイプは違うけれども、なぜそこにデザインが必要なのか、そのデザインによって何がどのように変わるのか。2人とも学生時代からこんな風にデザインと向き合う姿勢は一致していたので、同じ方向を向いて一緒に仕事ができそうだと思いました。

長谷川さん:屋号をminna(ミンナ)にしたのは、「みんなのために、みんなのことを、みんなでやっていきたい」っていう想いからだったよね。時代の先をいくような尖ったクリエイティブは格好いいと思うけれど、僕らふたりが目指したのは分かりやすく、伝わりやすいデザイン。みんなにとって身近なデザインです。クライアントの頭の中や、社会に潜むモヤモヤとした見えない想いを、最適な手段で魅力的に可視化したいと考えています。

角田さん:この考え方はずっとminnaの中心にあるものですね。

 

ーー「minnaらしさ」はどんなところにありますか?

角田さん:表現は様々ですが、らしさで言うと、人がハッピーになれるようなデザインというのが、全てに共通していることですね。そんなジャンルがあるか分からないけれど、得意ジャンルは?と聞かれたらハッピーなデザインと答えています。

長谷川さん:デザインに人を幸せにする力があるとしたら、それを提案するデザイナー自身も、仕事も暮らしも愉しんだほうがいいと思っていて。だから、僕らは日々ハッピーに過ごすことにこだわっています。クリエイティブまっしぐらになると、徹夜上等だし、作ることに没頭したい人ってけっこうな割合でいると思うんだけど、そこに対しては学生時代から疑問を持っているタイプだったので、一緒に仕事をはじめた当初から、結婚してからはさらに暮らしそのものを大切にするようになったよね。

角田さん:逆にそういう生活をしていないと、私たちがデザインを通して世の中に対してやりたいと思っていることを発揮できないんじゃないかっていうのも、あると思う。

長谷川さん:好きな仕事をして、たまにはチヤホヤされ(笑)、幸せな家庭をつくる。個人的にはこの3つの条件が整うよう、日々精進してます。2年前に子どもが生まれて、この想いはより強くなった気がする。自然とふたりの中でルールが出来上がって、仕事場にいない時、プライベートな時間はさらっと仕事の話をしなくなったもんね。仕事の話をするにしても「いま、仕事の話していい?」って確認してからするし。

角田さん:デザイナーって仕事しようと思ったら常に考えられちゃう職種なので、頭ではいつもお互い考えていることはあると思うんだけど、それをあえて今この時間に口に出すべきかとか、態度に出すべきかとか、行動に移す前にまず考える習慣がついたね。あと、基本ルールとして、9時に始業して18時に仕事を終えると決めているので、タスク管理だったり、マネジメントスキルがパワーアップしたんじゃないかな。

長谷川さん:角田はプロジェクトの管理とか、クライアントに対する気遣いの部分とか、納期までのロードマップづくりだったりとか、もともと得意だったんですけど、子どもが生まれてから飛躍的にパワーアップしたよね。「いま、これってどうなってるの?」とか言われると、こっちが焦っちゃう。仕事の時間と反比例して、プロジェクト数も売り上げも今のほうが伸びてるから不思議。仕事でも家庭でも頼もしい限りです(笑)

 

ーー結婚して子どもが生まれて、クライアントとの向き合い方やプロジェクトの進め方は変わりましたか?

長谷川さん:子どもが居るということも含めて受け入れて下さるクライアントさんが本当に多く、とても有り難いです。今は毎日子連れ出勤のスタイルで仕事しているので、たまに打合せにも同席させてもらったりしています。

角田さん:なので、今みたいにお昼寝から急に起きて来たりするのが日常なので、小さなハプニングに対しての対応力はついてきたかもしれません(笑)

長谷川さん:プロジェクトの進め方は、特に変わったことはないよね? すでにお話したとおり、僕たちが考えるデザインのキモは、頭の中のモヤモヤとした見えない想いを目に見える形に翻訳することなので、そのモヤモヤを解決するためにもっとも相応しい手段を選ぶことから始めるように心がけてます。

角田さん:そのために必要なのは、クライアントとの密な関係づくり。想いを共有し、最適な手段を用いて魅力的に可視化するために、このコミュニケーションの時間は欠かせません。クライアントとデザイナーという関係性のままだと腹の探り合いになってしまうので、最初に「1つのプロジェクトチームとしてやりたいです」とお話しすることにしてるんです。この関係づくりはminnaならではかもしれません。

長谷川さん:最近では手を動かして制作するデザイナーとしての役割に加え、プロデュースやコンサルティング領域まで携わらせてもらうことも少なくないので、クライアントの想いや根本的な課題をきちんと把握できるように、プロジェクトのスタート段階からヒアリングに尽力します。想いや理念までさかのぼり、方向性を共有できると、1案提案でも大きく外すことがないんです。結果、時間の効率化にもつながるっていう。

角田さん:仕事をご一緒した人からほかの会社を紹介していただき、またそこから次の仕事につながる。minnaの場合、とてもありがたいことに、人と人とのつながりから仕事になることが多いんです。

 

ーーふたりが思い描く会社の未来について、最後に聞かせてください。

角田さん:過去にはアルバイトさんがいた時期もあったんですが、基本はこれまでふたりで仕事をしてきました。そんな中、いま大学四年生の子が来年、社員として入社するんです。

長谷川さん:ずっとメンバーを増やしたいと思っていたので、今から楽しみです。

角田さん:これからも、私たちのアシスタントではなく、minnaの3人目、4人目として横に並んでいってくれるようなメンバーを増やしていきたいと思っています。

長谷川さん:いつになるかは分からないけど、ラーメン屋さんののれん分けみたいな感じで、独り立ちしてくれたら冥利につきるだろうね。

角田さん:だいぶ、気が早いかな(笑)

PROFILE

minna

2009年設立、2013年に株式会社ミンナとして法人化。角田真祐子と長谷川哲士を中心とする、みんなのためのデザインチーム。「みんなのために(for everyone)みんなのことを(borderless design)みんなでやっていきたい(partnership)」をコンセプトに掲げる。プロダクトやグラフィックなどの領域を横断し、想いの共有から可視化までの一連の流れをデザインと捉え、多分野で活動中。グッドデザイン賞、日本パッケージデザイン大賞金賞、SDA賞優秀賞、TOPAWARDS ASIAほか受賞歴多数。昭和女子大学 環境デザイン学科 非常勤講師。

http://minna-design.com/

    写真・三宅祐介 文・紺谷宏之

    関連記事

    関連記事