INTERVIEW

ママクリエイターのはなし。vol.03 振付家 ホナガヨウコ × CMディレクター 舟越響子

「出産にも子育てにも人生にも、“正解”なんてない」

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「オーディションからむちゃくちゃ盛り上げ上手で、受けた人みんなが謎の達成感を感じていた。誰もモブキャラ扱いしないのが舟越さんのすばらしいところ」と嬉しそうに語るのは、ゆず『恋、弾けました。』のMVなどに代表される、ポップでキャッチーな振り付けで引っ張りだこの振付家ホナガヨウコさん(写真・右)だ。正面に座るのは、確かなクオリティと強い巻き込み力で業界内外から厚い信頼を集めるCluB_A所属のCMディレクター舟越響子さん(同・左)。ホナガさんが出産について相談したことをきっかけにグッと距離が近づいたという仲良しのお二人に、出産・子育てが仕事にあたえる影響について語ってもらった。


——家族構成と、1日の過ごし方について教えてください。

ホナガさん:夫と、2歳になったばかりの娘がひとりいます。子供が産まれてから、すごく計画的に暮らすようになりましたね。昔は時間をたくさん使ってギリギリまで考えるタイプだったんですが、今はスタジオにいられる時間内で全部作っちゃうとか、朝5時からジムに行くとか、時間の使い方を工夫するようになりました。

舟越さん:フリーで働く夫と、7歳の長男と4歳の次男がいます。私も、早起きになりました。基本的には、毎朝4時に起きています。すごく大変なときは2時とかもあるかな。

 

——お子さんが産まれてから、仕事の仕方は変わりましたか?

ホナガさん:子供の生活サイクルが理想的だなと思いますね、早寝早起きで。無茶な生活をするとタガがはずれて、発想がぶっ飛んだりはするけれども、それが面白いかと言うとそれはまた別の問題なんです 。昔は人と違うことをしたいと思っていたけれど、今は子供に笑ってほしいとか、たくさんの人に共感してほしいという気持ちの方が強い。まるくなって、芯が強くなった気がしますね。そして、意外に思われるかもしれませんが、なんとお仕事をいただける数自体がすごく増えました。

舟越さん:ほんとそうだよね。私たちがまだそんなに話したことのなかった時期、ある現場でホナちゃんに「ちょっといいですか」って呼び止められたんですよ。「子供を欲しいと思ってるんですが、いつ産んだらいいのか全然わかりません。そもそも、子育てしながらフリーで働くってできるんでしょうか?」って、真剣に聴かれたことがあったんです。

ホナガさん:舟越さんは「いつ? 今! 今産もう! ぜんぜん問題ないよ。産休で切れるような間柄の人は、そこまでのものだったって考えるしかない。私が呼ぶし!」って言ってくれて……。めちゃくちゃ嬉しかったし、出産についてポジティブな気持ちになれました。

——舟越さんはいかがでしょうか?

舟越さん:産前よりもさらに、クオリティにこだわるようになりました。朝早くから打ち合わせを入れたり、お迎えがあるからと17時までに仕事をおさめてもらったりもしてるので、そうした不自由を強いてしまっている分、質で返さなきゃと思っています。

ホナガさん:すごくよくわかります。私も、子供を夫に預けて打ち合わせに行ったり、稽古の間はアシスタントの子に見てもらったりと工夫してやっていくなかで、「こうまでしてやりたい仕事なんだな」としみじみ思うようになりました。そうなると、クオリティへのこだわりもどんどん強くなりますね。

舟越さん:それと、昔から仕事の能力を上げるためには身を捧げて働くしかないと思っていたんですが、そうじゃないかもしれないと思うようになりました。別に子供の自由な発想がアイデアになるとかそういうことじゃないんです。そういう都合のいいことは起こりませんから。だよね?

ホナガさん:ないですないです(笑)。「子供の無邪気な動きにインスピレーションがわいて〜」とか言ってみたいです。

舟越さん:ないんですよ! でも、彼らに生活を合わせなきゃいけなくなったなかで、これまでと同じペースでは走れなくなって。ふと周りを見たら、子供のいる人って意外とたくさんいて、もちろんすごい仕事できる人もいて。みんな仕事だけしてるかっていうと違うんですよね。そういう意味で、視野が広くなったかもしれません。

——ネガティブな変化もありましたか?

舟越さん:もちろんいいことばっかりじゃないですよね。私の場合は夫がフリーなのでお互い融通利かせあうことができますが、旦那さんがサラリーマンの場合は、平日はまず無理なわけです。パートナーの状況はもちろん、本人の性格にもお子さんの性格にもよることですし、つど事情も変わるので、「正解がない」というのは強く思っています。これがいい! こうすべき! みたいなことは、まったくありません。

ホナガさん:そうですね。現場にも子供を連れていったことはありますが、もちろん仕事中に泣かないわけじゃないので、同時録音の現場だったら連れていくことも難しい。苦労はないわけじゃないですね。やっぱり。

 

——舟越さんのご長男はすでに小学校に入られています。

舟越さん:今までは、彼の手を引っ張って行って色んなことを「してあげる」「見せる」という感じでしたが、今はもう、彼には彼の人生がはじまっているというか。彼はサッカーが好きで、夢中になれるものがあって、サッカーチームというコミュニティに所属してがんばっています。それを見ていると、自分も頑張らないとなと思うし、今まで以上に、「彼の人生を見たい、見逃したくない!」と思うようになりました。なので、仕事をやりくりして、息子が出る試合はほとんど行っています(笑)。

——アウトプットに変化はありましたか?

ホナガさん:これは子供を産む前からではあるんですが、最近特に「動きの演出」ということを意識してやっています。私が舞台公演もモデルもやっていたからだと思うんですけど、「ここで人差し指を伸ばすとかわいい」とか、「こうひねった方が映える」とか、ダンスに限らずポージングや演技指導など人物の見せ方の演出をやらせてもらう機会が以前より増えました。ムービーやカタログのお仕事に「動きの演出」だけで呼んでいただくこともありますね。

 

——近々舞台公演もされるんですよね?

ホナガさん:そうなんです。12月1日から10日間、吉祥寺シアターという劇場で2014年に行った公演の再演があります。

 

——10日間は、結構ロングランですね。お子さんもいると正直大変じゃないですか?

ホナガさん:実は劇場って何年も前から予約しないと押さえられないので、今回の公演も娘の妊娠がわかる前から決まっていました。「お子さんも2歳になって多少落ち着かれて〜」とか言ってもらうんですけどそうじゃなくて、どちらかというと色々この公演に合わせてきた感じで。妊娠がわかったときは、本当に単独公演できるか不安になりましたが、吉祥寺シアターでの公演は私の夢のひとつだったので決行することにしました。受注のお仕事というのはある種「お題」が設定されているのでいくらでもできるんですけど、自主公演はお題そのものから設定する分すごく集中しないといけない。だから、今後子供が横にいてそれが続けられるかは正直まだわからない。いつもこれが最後になってもいいっていう気持ちでいます。

舟越さん:そんなこと言ってるけど、打ち上げで「よしまた2年後やるぞー!」って叫んでそうだけどね! 「2年後……娘4歳か……よしいける」って(笑)。

ホナガさん:そうですかね(笑)。それはわからないですが、産むかどうか悩んでる人に、「子供産んでも面白いことできるんだ」って思ってもらえるものにはしたいです。自分が正解だということではなく、ひとつの例として。

[イベント概要]

ホナガヨウコ企画 単独公演
『ななめライン急行』

会場:吉祥寺シアター
公演スケジュール:2017年12月1日(金)~12月10日(日)

1日(金)19:00
2日(土)14:00/19:00
3日(日)13:00☆/17:00
4日(月)19:00
5日(火)19:00
6日(水)14:00☆/19:00
7日(木)19:00
8日(金)19:00
9日(土)14:00/19:00
10日(日)13:00/17:00
☆キッズDAY(未就学児童との入場可)
※キッズDAY以外の回は未就学児童は入場できません。

アフタートークゲスト:
1日(金) 19:00 玉城ティナ(モデル・女優)
2日(土) 14:00 伊藤ガビン(編集者)
2日(土) 19:00 廣田あいか(アイドル-私立恵比寿中学)
3日(日) 13:00 草刈愛美(ミュージシャン-サカナクション)
3日(日) 17:00 DÉ DÉ MOUSE(ミュージシャン/DJ)
4日(月) 19:00 トクマルシューゴ(ミュージシャン)
5日(火) 19:00 児島幹規(『装苑』編集長)
6日(水) 14:00  ファンファン(トランぺッター-くるり)
6日(水) 19:00  若林広海(アニメ企画・プロデューサー)
7日(木) 19:00  津田大介(ジャーナリスト/メディア・アクティビスト)
8日(金) 19:00  青山裕企(写真家)
9日(土) 14:00  新津保建秀(写真家)
9日(土) 19:00  小谷実由(モデル)
10日(日) 13:00  千原徹也(アートディレクター/株式会社れもんらいふ代表 )
10日(日) 17:00  オールキャスト

チケット:ホナガヨウコ企画 『ななめライン急行』 | 吉祥寺シアター

PROFILE

ホナガヨウコ

ダンスパフォーマー/振付家/モデル。『ホナガヨウコ企画』主宰。実験的でありつつキャッチーでポップな振付と、相反する様に荒々しく激しい自由なソロダンスに定評がある。2001年頃から音楽と身体をセッションさせて情景を描き出す『音体パフォーマンス』という独自のスタイルで、企画、作・演出、振付を行い、楽器の生演奏を多く取り入れたライブ感のある舞台作品を発表し続けている。2006~2016年までの約10年間モデル事務所jungleに所属。2016年4月より独立。現在一児の母でもある。

    PROFILE

    舟越響子

    CMディレクター。1978年3月16日東京都生まれ。2000年に(株)葵プロモーション(現AOI Pro.)に入社。2008年、同社を退社しCluB_A所属となる。

      写真・なかむらしんたろう / 文・今井雄紀

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